さる2023年3月にOpenAIという研究所が開発した人工知能であるGPT-4が公開され、記事作成時点ではこのGPT-4を用いたChatGPTが一大ブームを巻き起こしている。
また、情報技術の爆発的発展により、各分野で蓄積され増え続けている莫大なデータ、いわゆる「ビッグデータ」というやつの影響力も昨今では計り知れない。
皆、大丈夫か? あまりにも流れの速い、最近のこうしたニュースに惑わされていないか?
もちろん、これら技術はとんでもなく有益で、自分の生活や所属している組織の業績を一新するポテンシャルを秘めている。(…というか、既に実際そうなっている例も多い。)
だが、「流行っているからなんとなく」という理由で、確たる目的もなく導入された例だって一定数、いや大多数あるだろう。
……ということで、今回はそうした「AI」と「ビッグデータ」について、ブームに踊らされず、かつ有効活用できるよう手助けしてくれる、最近読んだ書籍を紹介しよう。乞うご期待!!
教養としての生成AI
まずとんでもないのが、この書籍の執筆には生成系AIであるGPT-4をフル活用している。
そのうえで、細かな点や文章構成を筆者自身が修正しているのだ。
「いま最も優先して身につけるべき知識と思考術」という看板に偽りなし。
ChatGPTの活用法からAI研究の未来まで、分かりやすく解説してくれている書籍である。(その一部をAIが作成しているというのも、なかなか皮肉ではあるが(笑))
活用例が多いので、詳細は本書を読まれたしというところだが、ポイントを2つほど。
① AIとは「思想を映す鏡である」 鏡は驚くほど精緻に現実を映す。 そこに映るものは全く現実そっくりに見える。 まるで鏡の中に別の世界があるかのような錯覚さえ生じる けれどもそれは、ただ入ってきた光を跳ね返しているだけなのだ。 鏡は現実世界について何一つ理解していないだけでなく、 そもそも理解という概念すら必要としていない。 大規模言語モデルもこれと同じだ。 決して人間社会のことを理解しているわけではなく、 非常に複雑で精緻に作られているものの、 本質的にはただの鏡であるということを理解しておく必要がある。 「愛とは何か」・「死とは何か」を問えばそれらしい答えが出てくるが、 それはあくまでも統計的に「こんな感じの答えになるだろう」というルールを 満たすだけのものにすぎない。
② 人間の思考に与える影響 AIの一連の性質は便利な一方で、 我々の思考に与える影響についても懸念がある。 AIが人間の知的活動を代替することによって、 人間の脳の一部が退化するリスクがあるだろう。 AIに依存することで我々の自己決定能力が低下し、 自己責任の意識が失われることも考えなくてはならないかもしれない。 人間社会を反映したAIが持つバイアスや偏見が、 今度は逆に我々の思考のプロセスそのものに影響を与える可能性もある。 AIによって生成された情報に対しては、 常に批判的に検討する必要があるだろう。 AIが持つメリットとリスクの両面を理解し、 人間とAIが協力することで、 より質の高い意思決定ができるようになるはずだ。 生成系AIは我々が行う思考のプロセスを補完するツールである。 AIとの協力を通じてより高度な知的活動を実現できるだろう。 しかし、 注意が必要なこともある。 一つは、人工知能は人間と同様に、 前提となる情報が間違っている場合には正しい結論を導くことができないこと。 もう一つは、今後、大規模言語モデルがさらなるデータを求めた場合、 おそらく数年以内にインターネット上には人間が書いた文章よりも、 AIが生成した文章やAIが生成した画像・動画の方が多くなるはずだということ。 そのとき、学習に使われた文章が真実かどうか、確かめる方法は今のところない。
データ分析失敗事例集 ~失敗から学び、成功を手にする~
本書には、 きらびやかな体験談も、 成功のための秘訣も書かれていない。 それでも、 読者には大いに学びになる一冊であると確信している。 それは、 本書が現代のビジネスにおける「読み書きそろばん」と言っても過言ではない、 「データの活用」における失敗を避ける一助となるからである。 (本書「はじめに」より抜粋)
…なんとも素敵な書き出しではないか♪
以前に紹介した啓発書籍でも「失敗談にこそ成功のヒントが限りなく隠されているのである」とあった。この書籍も「失敗を避けるために何をしてはならないのか」を重視しており、多くのデータ分析時における失敗談を紹介してくれている。
貴重で臨場感あふれる失敗談が多いので、詳細は本書を読むべしというところだが(2回目(笑))、集められた事例に共通する失敗のポイントを5つほど。
① 分析結果に対する想像力の欠如 データの活用の結果として得られるものを、 どのようにビジネス上の価値にするかの想像力が欠如しており、 使い物にならないものを作ってしまうパターン。 [失敗回避のために] 実際の分析を始める前に、 考えうる結果をいくつか仮定して、 具体的にどのように使えるのかについて想像を巡らし、 シミュレーションを行う。
② 根拠のない過剰な期待 分析が始まる前に、 次に行われることがすでに決定しており、 その決定の正当性を補強できない結果や、 あらかじめ用意されたストーリーと矛盾する結果が受け入れられないパターン。 [失敗回避のために] ビジネスにおける分析とは道具であることを踏まえ、 引き返せない意思決定は所与のものと捉える。 その上で柔軟に分析の目的を変化させる。
③ 難しすぎる課題 解決したい問題は明確だが、 直接解決するには難しすぎたり、 抽象的すぎたりすることで、 ビジネス的に価値のある結果にまで到達できないパターン。 [失敗回避のために] 重要なのは最初に課題を設定したときに、 「本当に実現したかったことは何であったか」を常に意識できるようにし、 実現性に問題が生じた際に、 依頼者と分析者双方が成功のために忌憚なく議論を交わすための、 環境づくりを疎かにしないことである。
④ 分析実効性の確認不足 プロジェクトは開始されてしまったものの、 分析を実行するのに必要なデータや環境が用意できなかったり、 データや分析における前提が覆ったりすることで、 計画していた分析が実行できないパターン。 [失敗回避のために] 予防策としては、 懸念される問題について入念に確認を行うことが基本ではあるが、 人に確認するだけでなく、 実際のデータを自分の目で確認するまで楽観的にならない慎重さが必要である。
⑤ 手段の目的化 世間で注目を浴びている手法をプロジェクトに銘打つことで、 予算獲得や昇進など政治的に有利になるように権威づけたものの、 解決したい課題が曖昧なためビジネス的に価値のあるものが作れなかったり、 より簡易で効果的なアプローチがあるにもかかわらず、 不要な追加コストをかけたりしてしまうパターン。 [失敗回避のために] プロジェクトの計画や予算承認の場に技術に詳しい人物を配置するか、 技術者によるプロジェクトの実現性レビューを制度化することが望ましい。 解決するべき課題を明確にしてから解決策を検討するという手法も有効である。
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最後に、おすすめ書籍の一節を紹介しよう。
データの活用が進めば進むほど、 人々はデータからでは決めることのできない、 「人間」が解くべき本質的な問いに専念できるはずである。 そしてそれは、 データによってものごとが決められる不自由な世界ではなく、 むしろ自身の意志で問いに対する答えを決めていく自由な世界であるはずだ。
真に有効活用せよ!!AIとビッグデータを!!これぞ賢者への道程!!
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