前記事に引き続き、ミレニアム懸賞問題を紹介していこう。
今回は素数論および現代数学のキープレイヤー、「リーマン予想」について。
参考は↓の書籍。賢者を目指すブログ主の愛読書。
「ミレニアム懸賞問題って何?」という人は下記記事も参照されたし。
リーマン ゼータ関数
1859年にベルンハルト・リーマンは「与えられた限界以下の素数の個数について」という論文の中で、ゼータ関数と呼ばれる関数を定義し考察している。
ζ(s)=Σ(1/ns)=1+1/2s+1/3s+・・・ (自然数nについて合計した関数)
この関数と素数の関係については1737年にレオンハルト・オイラーも熟慮しており、下記の式(オイラーの積)としても知られている。(「オイラーの積」で検索すれば説明は出てくるので、詳細は割愛)
ζ(s)=Π(1-1/ps)-1 (全素数pについて積をとった関数)
リーマンは当初、ゼータ関数は複素関数として意味があると洞察していた。
sに複素数を入れ、複素数値ζ(s)を得ることができたのだ。実際、この式は複素平面の半分でしか有効でない。(sの実部が1より大きいときにだけ収束する)
ゼータ関数から明確な値を得るのは非常に難しい。
ζ(0)=-1/2、ζ(2n)は全ての正の整数nで超越的(整数からなる多項式に代入しても整数値を返さない。例:円周率πやネイピア数e)、ζ(3)は無理数など、ユニークな挙動を示すからだ。
ζ(奇数)の性質はいまだ謎に包まれている。
リーマン予想
リーマンは、ゼータ関数と複素解析の関係について目を見張るほどの考察を行った結果、素数計数関数(π(n):自然数n以下の素数の個数。π(8)=4、π(11)=5・・・)に対する厳密な公式を作り出すに至った。
これは数論における聖杯といっていい。
ところがその公式は、ζ(s)=0を満たすsの値が分かることを前提としていた。
ζ(-2),ζ(-4),ζ(-6)・・・がすべてゼロとなる値を確かめるのは比較的簡単だ。これらの点は「自明なゼロ点」と呼ばれる。
一方、自明でないゼロ点も無限にたくさんある。
リーマンは、ゼロ点はすべて、Re(s)=0とRe(s)=1の間の臨界帯にあること、および臨界線Re(s)=1/2を挟んで対称に存在することを示した。
リーマン予想では、ゼータ関数の自明でないゼロ点はすべてこの臨界線上にある。
現在までに臨界帯の境界線であるRe(s)=0とRe(s)=1の直線上にゼロ点が1つもないことは示されている。また、臨界線上に無限に多くのゼロ点があることも証明されている。
分散コンピューティングの力を利用して、初めの10兆個の自明でないゼロ点が実際に臨界線上にあることも確かめられている。
ただ、自明でないゼロ点が100%臨界線上にあるというリーマン予想は、リーマンがこれを提示して150年以上経過した今でも、素晴らしい頭脳を持った何百人という人たちが精力を傾けてきたが証明は完成していない。
L関数と一般化されたリーマン予想
ゼータ関数の分子1を(慎重に選んだ)複素数に置き換えた一連の関数族を「L関数」と呼ぶ。
これらはゼータ関数と似た挙動を示す。(秘密を明かしたがらないことも含めて)
それぞれが、オイラーの積の独自版・複素数への拡張・リーマン予想の変形を備えていて、これらは一般化されたリーマン予想としてまとめられている。
L関数は数学の世界のさらなる宝物のカギを握っている。
例えば、1994年にアンドリュー・ワイルズはフェルマーの最終定理を証明するためにL関数を利用した。その他にも、現代数学の中心的手法であるラングランズプログラムや、他のミレニアム懸賞問題であるバーチ・スウィナートン=ダイアー予想でもL関数がその中心テーマである。
リーマン予想の証明は、素数の分布を明らかにすると考えれば極めて重要だろう。
また、ゼータ関数が現代数論のカギとなるL関数族のなかの最初の一つである点で、その意味がさらに深みを増したともいえる。ゼータ関数を理解するための技術は、残りのL関数を理解する助けとなるだろう。
一般化されたリーマン予想によれば、すべてのL関数に対する自明でないゼロ点は臨界線Re(s)=1/2上にある。L関数において、これが個別に証明されたり反証されたりした例は現在のところない。
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ここで紹介したのはリーマン予想に関する大まかな知識である。
もっと知りたいと思ったら、専門書を目印に、「数学の森」の奥深くに進んでみよう。
目指せ!!未確認問題動物(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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