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方程式はなぜ解けなかったのか? おすすめ理学書籍

数学

中学・高校の数学で皆が習う、方程式の最終兵器「解の公式」。

実は解の公式には長~い歴史があるのをご存知だろうか?

2次方程式の解の公式は、古代バビロニアで既に知られていた。
3次方程式の解の公式は、16世紀イタリアでカルダノが発見した。
4次方程式の解の公式は、同じく16世紀イタリアでフェラーリが作った。
そして、5次以上は解の公式が作れないことを、19世紀にアーベルが証明した。

しかし、ⅹ5=32みたいに、5次以上でも解ける方程式はいくらでもある。なぜか?

こうした代数方程式の解の公式を考察し、そして後の数学の方向性を決定づける革命を起こした、悲劇の天才エヴァリスト・ガロア。

今回紹介するのは、そんなガロアの研究を説明し、ガロアが生み出した「群」とは何かを分かりやすく(?)解説している書籍である。

本書のポイントを3つ挙げるとすれば、

① 解の公式は、方程式の係数の+,-,÷,×,√,3√,4√,…で構成される
② 解の公式が作れるのは、方程式の解で得られる「ガロア群」が可解群であるとき
③ 5次以上の方程式ではガロア群が可解群でない→解の公式が作れない

さてさて、これらをかいつまんで説明していこう。

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難し過ぎる「代数学の基本事項」

いきなり「ガロア群」から話始めるのもなんなので、まずは代数学の基本を確認しよう。

1799年にカール・フリードリヒ・ガウスは後に代数学の基本定理と呼ばれることを証明した。

複素数からなるn次多項式にはn個の解が必ずあるのだ。(ときにこれらは重複し得る)

この証明にはいくつかのパターンがあり、そのうちの4つは複素解析の手法を用いてガウスが示している。以前紹介した書籍でその証明例も触れているので、興味があれば読まれたし。

数学にとって「証明」とは? おすすめ理学書籍
ギリシャ人以来、数学とはすなわち証明である:或る人々によれば、証明というものは、この言葉がギリシャ人から付与されたとこ...

n次の代数方程式は下の形式で表現される。

xn+pxn-1+qxn-2+…=0 (p,q,…は複素数)

これにn個の解があるので、さらに下の形式でも表現できる。

(x-a)(x-b)(x-c)…=0 (a,b,c,…は複素数)

代数方程式の解の公式とは、前者の表式での係数p,q,…の四則演算や累乗根で後者の表式での解a,b,c,…を与える式のことである。

ちなみに、解a,b,c,…の並び方を順列の取り方として、「ガロア群」なるものを構成させるのが本書の肝になってくるので、こちらも覚えておかれたし。

例:(a,b,c)、(a,c,b)、(b,a,c)、(b,c,a)、…

ややこし過ぎる「ガロア群」と「ガロアの定理」

最初に謝っておこう。

こっからの内容が「なぜ方程式は解けないのか?」…つまり、なぜ与えられた方程式が解の公式を使って解けない、もしくは解の公式が存在しないのかを示す、この本の中核である。

…しかし、これを基に代数学が発展しただけあって、数学を専門的に学ぶ人の一つの到達目標となっているため、かな~りややこしい…

以下でそれを端的に紹介するので、興味ある人は本書や群論の専門書を読まれたし。

メインは3つの要素:ガロア群→正規部分群→ガロアの定理

「ガロア群」
係数p,q,…の四則演算で計算される数(係数の有理式の値)を「使ってよい数」とする。
方程式のガロア群とは、方程式の解(a,b,c,…)の並び方の置換の集まりで、以下の性質⓪~②を持つもの(Hと書こう)である。このようなHは、ガロアにより存在することが保証されている。
⓪ Hは、置換の積について閉じている。
① 係数が「使ってよい数」であるa,b,c,…の有理式R(a,b,c,…)に、Hに含まれるどの置換を作用させても有理式Rの値が変化しないなら、その値は「使ってよい数」である。
② 係数が「使ってよい数」であるa,b,c,…の有理式R(a,b,c,…)の値が「使ってよい数」なら、Hに含まれるどの置換を有理式Rに作用させても、有理式Rの値は変化しない。
ここで有理式Rの値とは、式の中のa,b,c,…に対応する解の値を代入して得られる数のことである。

…はい、ややこしい(笑)

まだまだ続くぜ!!

「正規部分群」
ある1つの組のそれぞれの順列に、同じ置換を作用させることで、別の各組の全ての順列が得られる時、これを正規部分群という。

ここでの正規部分群の使い方のイメージとしては、n個の要素の並び方を全部書き出したときに、それを共通の法則を満たすように2つのグループに分けましょう、といった感じ。

解a,b,c,…の並び方に、並んだ数それぞれに「使ってよい数」で作られた式を作用させて新たにa’,b’,c’,…となる並び方を作る。その並び方をすべて書きだして、共通法則でm個のグループに分ける。その小グループの要素a”,b”,c”,…の並び方に同様の作業を繰り返す。

この作業n回目で得られたガロア群の条件を満たす順列の組をGnとして、

「ガロアの定理」
方程式のガロア群の正規列:
G0,G1,G2…Gr (=解の順列1つだけからなる組)
で、以下の性質を持つものがある時、その方程式は代数的に解くことができる。
・Gnに含まれる置換の個数は、前のG(n-1)に含まれる順列の個数の素数分の1である。
逆に、代数的に解くことのできる方程式に対して、この性質を持つ方程式のガロア群の正規列を構成できる。

…はい、ややこしい(笑)

こんな内容を高校生のときにガロアは構築するに至ったという…溜息がでるわ(笑)

現代では、この性質を持つ群をそのものズバリ「可解群」と呼ぶ。

シンプル過ぎる結論

以上を踏まえ、解の公式…つまり方程式が代数的に解けるかどうかの結論を述べよう。

4次以下の方程式はガロア群で可解群がつくれる→解の公式が存在する
5次以上ではガロア群で可解群がつくれない→解の公式が存在しない

…はい、シンプル!!これまでの複雑さはどこにいった(笑)

付け加えるならば、ガロア群に限らず、5以上の要素n個の順列で正規部分群を作る際は、[n個の要素の順列]→[偶置換を作用させて得られる順列]→[恒等置換]という並びになる。

それぞれの置換の個数がn!→n!/2→1であるため、n=5次以上でn!/2が素数ではない。つまり、1/(n!/2)が素数分の1にならず、ガロア群の正規列の要件を満たさない。

したがって、可解群とならないわけだ。

(この並び方だけになるのは5次以上であり、1~4次では他の並びも存在する。)

さて、ガロア理論の実用例を他にも挙げてみよう。

・角の三等分線を示す方程式は、その係数と解から可解群を構成できない
・正n角形を示す方程式は、[フェルマー素数]×[2の自然数乗]なら可解群
(フェルマー素数とは、2の(2k)乗+1となる数で素数となるもの。判明しているのはk=4まで。k=5は素数でない。以降、素数となる6以上のkは見つかっていないが、証明されていないため存在しないともいえない。)

詳細は省くが、コンパスと定規で長さの二乗根は作図が可能であるから、√が含まれる解の公式を構築できれば作図可能となるわけだ。角の三等分線は作図不可能だし、条件を満たす正n角形は作図可能である。

こうして考察されていった解の公式の存在性は、順列の置換という要素から、代数学の群論という分野としてその後発展していく。

今日では、場の量子論におけるリー群や抽象代数学における群の表現といったように、群論は他の数学・物理学分野を動かす仕組みの多くを提供しているのだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで紹介したのはおすすめ書籍に関する概要と群論のほんの一部である。

もっと知りたいと思ったら、本書を一読して、「数学の森」の奥深くに進んでみよう。

目指せ!!数学の愛人(笑)!!これぞ賢者への道程!!

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