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2つの粒子で世界がわかる おすすめ理学書籍

量子論

身の回りのものは粒子が集まってできている。

私たちの体、空気、家、道路・・・etc.

これらの粒子はとても小さく、肉眼では見ることができないが、数えきれないほど集まって世界を形成しているのである。

では、そんな粒子は何種類あるか?

基本的な素粒子の数?元素118種?それとも膨大とも思える分子の登録数?

ところが、量子力学である見方をすると、なんと粒子はたった2種類のみになるのだ。

それが「ボーズ粒子」と「フェルミ粒子」である。

今回紹介するのは、ボーズ粒子とフェルミ粒子(+もう一種の粒子)の特有の性質と、それらが引き起こす現象を分かりやすく解説している書籍である。

本書のポイントを3つ挙げるとすれば、

① 粒子が同じ状態になれるのがボーズ粒子、なれないのがフェルミ粒子
② ボーズ粒子は超流動、フェルミ粒子は超伝導
③ 例外:エニオン

さてさて、これらをかいつまんで説明していこう。

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フェルミオン1+フェルミオン2 ≠ フェルミオン2+フェルミオン1

前述の「ある見方」とは何か?

それはずばり「粒子が複数あるときの振る舞い」である。

詳細は省略するが、粒子の量子力学の基本式であるシュレディンガー方程式で複数の粒子の状態を解く場合、粒子間の入れ替えに関して波動関数が同じかどうかという問題がある。

つまり、簡単に2粒子(x1,x2とする)を例にとって挙げると

|f(x1,x2)|=|f(x2,x1)| ⇒ f(x1,x2)=±f(x2,x1)

…となるわけだが、一方は入れ替えても波動関数の符号が変わらず、他方は入れ替えると符号が変わるのだ。

この2通りの性質を分類基準として

同じ種類の粒子を交換したとき、
波動関数の符号が変わらない場合はその粒子をボソン、
符号が変わる場合はフェルミオンと呼ぶ

さらに言えば、波動関数が粒子の状態を記述していることから、

複数の粒子が同じ状態になれるのがボソン、
なれないのがフェルミオン

…このように、粒子はその集団での振る舞いから2つに分けられるのである。

ちなみに、「複数のフェルミ粒子は同じ状態になることはない」ことを量子力学では「パウリの排他律」と呼び、この制約によって生まれるフェルミオン間の反発力が原子の構成や恒星の崩壊過程などの量子現象を支配する、まさに基本原理なのである。

また、「複数のボーズ粒子が同じ状態になる」ことを「ボース・アインシュタイン凝縮」と呼び、それらが引き起こす摩訶不思議な現象が後述する超流動につながるのだ。

ちなみに、このような分類は「同じ粒子」間の振る舞いであり、例えばボソンであるヘリウム 4とナトリウム原子とが混ざったとき、それぞれが同じ状態になっても「パウリの排他律」は働かないし、「ボース・アインシュタイン凝縮」も起こさない。

また、「同じ粒子」がペアを形成した場合、例えばフェルミオンである電子と電子がペアとなったとき、そのペア一塊は粒子の交換性からボソンとして振る舞う。この性質も、後述する超伝導という摩訶不思議な現象を引き起こすのである。

フェルミオン×フェルミオン = 超伝導 ≒ 超流動

一般的には量子力学から導かれる結果はミクロな世界で当てはまるものの、目に見えるスケールでは成り立たないことがほとんどだ。

なぜ大きなスケールでは量子力学がそのまま適用できないのかは昔からの難問であり、現在でも研究が進められている課題である。

そんな中で、目で見て楽しめる貴重で摩訶不思議な量子現象がある。

それが、ボソンによる「超流動」と、フェルミオンによる「超伝導」だ。

解説は専門書にお任せするが、この現象を簡単に言えば

① ボソンがボース・アインシュタイン凝縮する
② 粒子がどれも同じ状態になって、すべて同じ動きをする
③ つまり粒子間の「粘性」がなくなる
この粘性がゼロであることによってボソンが示す、例えば液体が器の壁を上って自ら脱出するといったような、普通の流体の性質を超える現象を「超流動」と呼ぶ。
① フェルミオンがペアを作る
(例えば、極低温の結晶ならば電子と電子がクーパー対と呼ばれるペアを形成する)
② 「フェルミオンのペア」=ボソンとして振る舞うようになる
③ つまり「フェルミオンのペア」がボース・アインシュタイン凝縮する
この「フェルミオンのペア」が示す超流動を「超伝導」と呼び、例えば電子であれば電気抵抗がゼロになったりと、フェルミオンの伝導に関する現象を引き起こす。

つまり、本質的にこれらの性質は「ボース粒子が起こす超流動」を「1つのボース粒子」か「フェルミオンのペア」かに場合分けしただけなのである。(性質・傾向・実験結果などに多少の差異は生まれるが)

ちなみに、電子のクーパー対形成に関わる理論としてBCS理論があるが、それに基づいて計算すると物質が超伝導になる温度(転移温度)は高くても40ケルビン程度になる。

しかし、1986年を皮切りに転移温度が100ケルビンを超える物質が次々と見つかったのだ。

これら高温超伝導物質の発見により、それまで定説となっていた超伝導転移温度の上限が一気に破られ、BCS理論とは異なるメカニズムでの電子ペア形成の解明研究も精力的に進められている。

エニオン ≠ フェルミオン ≠ ボソン

ここまでは世の中のすべての粒子はボソンかフェルミオンのどちらかに分類されることを前提に話をしてきた。

それは、本記事最初の項であるように、粒子間の入れ替えでは波動関数の絶対値が変わらないという要請から、±のみで波動関数が記述されることからきている。

では、例えば1粒子の状態を複素平面のように2元的に表記して、絶対値が同じでも複数の波動関数の記述が可能な場合はどうなるか?

また、例えば電子とクーパー対が区別できないような状態ならどうなるか?

そんなもの現実にはないじゃないかって?

実は、後者の「電子とクーパー対が区別できない」=「電子と正孔(反電子)が区別できない」粒子状態はトポロジカル超伝導体で理論的に記述可能であり、まだ発見されてはいないが不思議な性質をもつことが分かっているのだ。

(この粒子と反粒子が同一視できる粒子を「マヨラナ粒子」と呼ぶ)

こうした、ボソンとフェルミオン以外の粒子はエニオン (「any」+粒子を意味する「-on」)と呼ばれ、それらの可能性や理論モデルを模索する研究も進められているのである。

トポロジカル量子コンピュータの主役である「マヨラナ粒子」に関しては下記の記事も参考にされたし。

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ここで紹介したのはおすすめ書籍に関する概要と量子論的現象のほんの一部である。

もっと知りたいと思ったら、本書を一読して、「量子の海」へ漕ぎだそう。

目指せ!!量子論の隣人(笑)!!これぞ賢者への道程!!

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