ここでは波動に関する面白い豆知識を前後編で3つほど紹介する。
今回は前編。タイトルは若干謎めいてるが、完全に悪ふざけである(笑)。
参考は↓の書籍。身近な物理を扱った、持ち運びできる鈍器(そこそこ厚い(笑))。
「身近な物理をもっと知りたい!!」って人は下記記事も参照されたし。
基本事項:音は常にまっすぐ進むとは限らない
さて、波動の豆知識を取り扱うにあたっての基本知識を説明しよう。
音波は、空気中であれ、海中であれ、直進しないことがしばしばある。
これは、音波が隣接する物質内の音速の違いによって、上や下へ左や右へ曲がるからだ。
音波に限らず、一般的に波の性質として、
波は速度が遅い方へ曲がって、進行方向を変える
・・・これを基本事項として覚えておかれたし。
自分が友達と腕を組んで歩いているところを想像すると理解しやすい。友達が左側にいて、歩くペースを落としたとすると、あなたの体は左後ろに引っ張られて、あなたの進行方向は左に曲がるだろう。逆に、友達がペースを上げたら、あなたは左腕を前に引っ張られて、右に曲がる。(そして友達も右に曲がる。)
これと同じ現象が波の場合にも起こるのだ。
方向転換の法則は、あらゆる種類の波(音や水面波、地震波や光にまで)当てはまる。
夕方に豆腐屋のラッパがよく響く理由
さて、前述基本事項を踏まえて、大気を例にとってみよう。
高度が高くなると、通常では気温は低くなる。
つまり、音速は、高い高度のほうが低い高度よりも遅くなるのだ。
日中、特に朝一では、地面の近くの気温が高く、上空の気温が低い。その場合、音は上向きに曲がるため、音源からでた音全体の上半分はそのまま上空へと進んでしまう。また、音全体の下半分の多くも地面に吸収されてしまう。結局、あなたの元へ届くのは、地面すれすれを上方カーブしながら進む、一部の音波のみなのだ。
このため、朝が静かに感じられることが多いのである。音が上空に向かって曲がるため、地面近くにいる人には、ほとんどの音が・・・遠くを行き交う自動車の音も・・・鳥のさえずりも・・・波の音も・・・ライオンの雄叫びも・・・届かないのだ。
では、逆に夕方の場合はどうだろう?
日が沈むと、赤外線放射が顕著になり、地面の温度は急激に下がる。それに対して、空気はそれほど急速に冷えないので、日没後は地面近くの空気のほうが上空の空気よりも温度が低くなるのだ。つまり、朝と逆パターンの気温配置なのである。
この場合、音は下向きに曲がるため、遠くを行き交う自動車や列車の音など、先ほどと逆に遠くの音までよく聞こえるようになるのだ。
昨今でも、夕方付近に豆腐屋が直売カートで住宅地を巡る光景をしばしばみかける。
なんともいえない哀愁を放つ豆腐屋のラッパが、これまた哀愁漂う夕暮れ時の家々に響き渡って聞こえるのも、そういった理屈が隠れているのだ。
ちなみに、
朝遠くの音が聞こえる日は暑くなる
・・・こんなおばあちゃんの知恵袋があるが、興が乗ったらその理由も考えられたし。
海中の音響チャネルに響くクジラの歌
海中では、深く潜るほど水温が低くなっていく。
水温が低いと、音の速度は遅くなる。しかし、水深が深くなると、水圧のため水は圧縮されて密度が上がり、音は速くなるのだ。
この2つの効果がせめぎ合うと、水深が深くなるにつれて音速は徐々に遅くなるが、水深1kmくらいから再び音速は速くなる。
音の経路は常に遅いほうへ曲がる。水深1kmより上方では音は下に曲がり、下方では音が上に曲がる。したがって、海中の音は水深1km付近の「音響チャネル」に収束し閉じ込められて、外に出ることはないのだ。
この音響チャネルはほぼ世界中の海に平たい層として広がっている。ここでは、音は水平には広がるが、垂直方向には広がらず、水中でそれほど拡散や霧散をしない。
そのため、音源から何千kmも離れたはるか遠い場所でも、音響チャネルにマイクを設置しておけば、音を聴きとることができるのだ。
なんと、クジラ同士はコミュニケーションをとる際に、この音響チャネルを利用して鳴き声を伝え合うことが知られている。おそらく進化の過程で何百万年も昔に発見したのだろう。
その鳴き声は「歌」にも例えられ、一度聴くと忘れらない美声なんだとか。(インターネットやCDなどで実際に聴くことができる。)
自分の居場所を伝えるためだけでなく、音響チャネルで世界中のクジラ達がハーモニーを楽しんでいると想像するもの悪くないかな。
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ここで紹介したのは波動についてほんのひとかけらの豆知識である。
もっと知りたいと思ったら、専門書を詰め込んで、「理学の頂」の山登りに出かけよう。
目指せ!!理学の友人(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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