現代数学に立ちはだかる懸賞金問題などの難問の数々・・・ 抽象化が進んだ現代数学では、各分野単体でそれら難問に立ち向かうには限界だと悟り、数学基礎を土台に、代数・幾何・解析が混じりあった分野を構築している。 圏論・ラングランズプログラムなどがそうしたハイブリッド理論の架け橋だ。
現代数学の記事や数学書籍の記事で散々匂わせてきた重要キーワード…「圏論」
本記事では、そんな圏論を一から学ぶにあたって、おすすめの書籍を紹介しよう。
圏論スタートアップのポイントはズバリ3つ。(この形式、久しぶりだなぁ(笑))
① 圏論とは、「異なるものの間の同じさ」をシステム的に扱う数学的な枠組み
② まずは「圏」・「関手」・「自然変換」の定義を知ろう
③ あとは自分の興味ある分野に使えそうな圏論の使用例を探そう
圏論の道案内
圏論とは何か?
一言でいうと、現代数学のさまざまな場面で使われる「数学のコトバ」である。
圏論のコトバは、いろんな具体的観念に共通する抽象的性質を記述する上で、便利な抽象力と一般化力を持っているのだ。
よく言われることであるが、学問や技術の進歩はその細分化をもたらしがちである。けれども、我々は異なる宇宙に生きているわけではないので、それぞれの分野を常に有機的に結び付けていく必要がある。
学問,芸術,教育,政治,経済…我々に無縁なものなど何一つ無い。そこで圏論の出番である。
圏論とは「異なるものの間の同じさ」をシステム的に扱う数学的な枠組みなのだ。
圏論により、数学の中の異なる分野…代数学,幾何学,解析学…さらにはそれぞれの中の多くの分野…それらの間の、普通の数式による表現では予想もしなかったような、関係性を明らかにしてくれることがある。
また、その一般性の及ぶ範囲は数学の中の諸分野にとどまらない。物理学,論理学,計算機科学,システム生物学など、圏論の使われる学術分野はどんどん広がりつつあるのだ。
まさに現代数学の基本的なツールなのである。
圏論の歩き方
では、そんな圏論を学ぶにあたって、まず押さえておきたいのが「圏」・「関手」・「自然変換」という3つの主要概念である。
ふわっとした概要を述べると、「圏」とは対象と矢印からなる、ある種のシステムだ。
そして、ある対象と対象を結ぶ矢印と、それらとは違った対象間の矢印とで、もし構造的な対応があるとすれば、それは非常に根拠のある「アナロジー」ということになる。これが圏論の「関手」である。
さらに、個々の「アナロジー」だけでなく、それらの「アナロジーの間のアナロジー」が捉えられたとき、異分野協働が単なる題目以上のものとなる。この「アナロジーの間のアナロジー」が圏論の「自然変換」だ。
……なるほど、わからん(笑)
では、少し数学っぽく定義や考え方を書き記そう。
[定義] "対象"および"射"と呼ばれる(それらの間の「等しさ」、つまり「=」を論じれるような)「何らかのものたち」について、"域・余域"、"合成"が定められ、結合律と単位律が成り立っているとき、このシステムを圏(category)と呼ぶ。
圏から圏への射が関手である。 関手は「表現」(モデル,理論,見方…etc.)に対応。 関手から関手への射が自然変換である。 自然変換は「表現」の間の変換。 関手を対象とし、その間の自然変換を射とする圏が関手圏である。 米田埋め込み(詳細は割愛)を通じて、圏は関手圏の一部と思える。 したがって、「対象とは関手、射とは自然変換」と考えることができる。 関手圏の同型(詳細は割愛)が自然同値。 自然同値な表現は、異なっていても「本質的に同じ」。 圏論は自然同値(異なるものの間の「本質的な同じさ」)を論じるための枠組み。
……なるほど、さらにわからん(笑)
もうここはシンプルに、おすすめ書籍を紹介しよう!!(丸投げである(笑))
この記事作成時点で↑以上にシンプルで分かりやすい書籍は今のところないと思う。
圏論の地平線
歴史的には、「圏」や「関手」よりも「自然変換」が最初に念頭に置かれていた。
近代になり、数学的構造の理解には、その構造を保つ対応について知らねばならないという機運が高まっていた。具体例として、幾何と代数との対応である「ホモロジー論」がある。
しかし、当時のホモロジーにおいて、図形(位相空間)の情報を担う群の構成の仕方が多数あり、必然的にそうした対応のさせ方も多数乱立していたのだ。それでも、対応は全然違うのに、「本質的に同じ」だった。
この「同じさ」を取り扱うためには、それまで知られていたような「同じさ」では歯が立たない。そしてその得も言われぬ「同じさ」を表現しようとして、自然同値を定義したのだ。
自然同値は可逆な自然変換で、自然変換を定義するには関手が、関手を定義するためには圏が必要。そして、そのために圏論が生まれたわけである。
その圏論の持つ適用範囲の広さが理解されるにつれて、さまざまな分野に応用されたり、基礎理論として取り入れられたりして現在に至るのだ。
それらコンテンツを知るために、↓の2冊を紹介しよう!!(ここでも丸投げ(笑))
ここまできたら、もうあとは好みでいろいろ文献や有識者のコメントを参考にしつつ、面白そうな概念を圏論を使ってアタックしてみよう。
なにせまだ発展途中の分野。答えは一意ではないし、視界が開けてからが長いのだ。
なお、より専門的な形で圏論を議論したい場合は、当ブログでちょくちょく難易度MAXとして挙げている↓の書籍を紹介しよう。読まれるなら覚悟されたし(笑)
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現代数学・・・代数と幾何と解析が高度に融合し、抽象の深淵へ (2回目(笑))
そんな現代数学のキープレイヤーである圏論を一から学ぶのにおすすめの本を紹介した。
もっと知りたいと思ったら、圏論を道しるべに「量子の海」…「知識の宇宙」…「理学の頂」…
…そして「数学の森」に出かけようではないか!! これぞ賢者への道程!!
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