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宇宙線のひみつ おすすめ理学書籍

相対論・宇宙
2021年5月27日
アメリカ・ユタ州の午前4時35分56秒に、
宇宙線検出装置「テレスコープアレイ実験」の観測史上
もっとも高いエネルギーをもつ宇宙線、
「アマテラス粒子」が検出されました。

地表粒子検出器アレイで得られた信号を解析すると、
50平方kmという広い範囲に、
244エクサ電子ボルト(=244×1018eV)と見積もられるエネルギーの
宇宙線が飛来していたことがわかったのです。

(本書「序章」と「終章」より一部編集して抜粋)

いつものように、いきなりの話題展開でサーセン(笑)

本記事のテーマでもある「宇宙線」とは、宇宙空間に存在する高エネルギー粒子で、放射線の一種として扱われている。

宇宙を舞台としたSF界隈では話題に上がることもあるが、実は常に地球に降り注いでいる、とても身近な存在なのだ。

広義には、陽子,中性子,原子核,電子,陽電子,ニュートリノ,光子,重力波も宇宙線に含まれる。ただし、天体物理学の研究者が宇宙線というときには、主に「電荷をもった原子核」を指す。

今回おすすめするのは、そんな宇宙線の基本事項を分かりやすく説明しているだけでなく、その魅力や天文物理学の最近のトピックも存分に紹介している、面白さエクサ電子ボルト級(単位については後述)の書籍なのだ!! 乞うご期待!!

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「エクサ電子ボルト」ってどれぐらい?

さて、「エクサ」なんていう普段お目にかかることのない接頭語がいきなり登場しているが、アマテラス粒子はどれぐらいのエネルギーになるのか例示しよう。

まずは国際単位系の接頭語について。

<SI接頭語および接頭語記号>
国際単位系(SI)において、
十進の倍量・分量単位を作成するために、
SI単位およびいくつかのSI併用単位の前につけられる接頭語。
国際度量衡総会(CGPM)によって決定されている。

以下、記事作成時点での一覧

クエタ:Q = 1030
ロナ:R = 1027
ヨタ:Y = 1024
ゼタ:Z = 1021
エクサ:E = 1018
ペタ:P = 1015
テラ:T = 1012
ギガ:G = 109
メガ:M =106
キロ:k = 103
ヘクト:h = 102
デカ:da = 101

デシ:d = 10-1
センチ:c = 10-2
ミリ:m = 10-3
マイクロ:μ = 10-6
ナノ:n = 10-9
ピコ:p = 10-12
フェムト:f = 10-15
アト:a = 10-18
ゼプト:z = 10-21
ヨクト:y = 10-24
ロント:r = 10-27
クエクト:q = 10-30

(詳細はwikipediaの該当記事より)

そして、244EeVのエネルギーをもつアマテラス粒子は、40Wの電球(今どき使われているかはおいといて)をどれぐらいの時間光らせることができるだろうか?

正解は「1秒」。

たったそれだけ!?

……と思ったそこのあなた、まだ量子論とマクロの世界の捉え方が甘い!!

たった1粒子がそれぐらいのエネルギーをもつということは、
1グラム(≒6×1023)集めると考えると…

1粒子:40W×1秒 = 40J(ジュール)
1グラム:40J×6×1023 = 2.4×1025J

このエネルギー量は40Wの電球をなんと約2京年も光らせることができるのだ!!

この宇宙がはじまって138億年しか経っていないので、
100万回以上この宇宙を繰り返したとしても光り続けることができる。Woh!!

日本全体の年間電気使用量(約1000TW・時)でも、
約1000万年分もまかなうことができる。Woh!!

我々人類は、人工的に粒子を加速させて高エネルギー粒子を生み出す努力を続けてきた。

しかし、244EeVというのは、地球最大の人口粒子加速器(※)で到達できるエネルギー(6.8TeV)よりも7桁以上も大きいものである。

(※:欧州原子核研究機構(CERN)が建設した大型ハドロン衝突型加速器(LHC))

これは、宇宙に私たちが到達できないレベルのエネルギーの粒子を生み出す、巨大な「天然の粒子加速器」が存在していることを示す証拠であるが、その発生源と加速機構については未だ謎のままであるのだ。

これらの解明は、宇宙物理学と天体物理学において解決すべき最重要課題のひとつである。

桁違い過ぎて、月並みで陳腐な台詞だが、宇宙って広くて凄いとしか言いようがない…。

宇宙線の発生源は?

前述のように、そんなアマテラス粒子の発生源は現在判明しておりません。

~完~

……で終わっては数少ない記事読者に怒られる(笑)

この記事作成時点で、アマテラス粒子も含めた宇宙線の発生源…つまり宇宙に存在する粒子を極めて高エネルギーをもった領域まで加速する天然の加速器の候補を紹介していこう。

(加速機構については、一様磁場中のローレンツ力…つまり粒子の電荷と天体の大きさ(回転半径)とその磁場の大きさが関係してくる。また検出エネルギーについては、宇宙マイクロ波背景放射との相互作用によってエネルギーを失うといった事象も関係してくる。ヒラス条件やGZK限界といったこれら関連事項については、本書を参照されたし。悪しからず。)

・超新星残骸
太陽の10倍以上の質量をもつ重たい恒星は、
寿命を終えると爆発すると考えられている。
この現象を「超新星爆発」と呼ぶ。

爆発後には衝撃波が宇宙空間に広がる。
この爆発後に広がった衝撃波は「超新星残骸」と呼ばれる。

1054年に地球で観測された(数々の歴史的証拠から判断)超新星爆発の残骸は、
「かに星雲」と呼ばれ、
その衝撃波で加速された粒子がPeVを超えるエネルギーをもつガンマ線となって、
地球に到来していることが近年明らかになった。

超新星残骸は、
天の川銀河での有力な極高エネルギー宇宙線の発生源とみなされているが、
ヒラス条件に照らして磁場の大きさと衝撃波のサイズや継続時間を考慮すると、
1PeV程度までしか宇宙線を加速できないと考えられている。
・中性子星とマグネター
太陽質量の10~30倍程度の星は、
爆発後にその中心に半径10kmほどの「中性子星」を残す。
この中性子星は非常に高密度であり、
「宇宙最強の磁場」をもつ天体と言われている。

中性子星のなかでも、
特に磁場の強いものは「マグネター」と呼ばれる。
マグネターには1014ガウス(100億テスラ)もの磁場があると考えられている。
これほどまでに強い磁場があれば、
ヒラス条件によると100EeV以上に宇宙線を加速できる候補天体と挙げられる。

ただ、
天の川銀河にある中性子星が起源だとすれば、
その方向から100EeVの宇宙線が多く到来すると予想されるが、
これまでの観測ではそのような結果は見られていない。

そのため、
少なくとも天の川銀河にある中性子星は、
100EeVまで宇宙線を加速するようなものはないと考えられる。

超新星残骸や中性子星は天の川銀河に多く存在しており、「天の川銀河で見つかっている最強の粒子:ペバトロン」(1PeVの宇宙線)の有力な発生源候補となっている。

・巨大ブラックホールジェット
天の川銀河や近くのアンドロメダ銀河,大マゼラン星雲などは、
「おとめ座超銀河団」と呼ばれる局所銀河団に所属している


(こいつらではない(笑))

おとめ座銀河団の中央には楕円銀河「M87」が存在しており、
さらにその中心には太陽質量の65億倍の「超巨大ブラックホール」が存在している。

この超巨大ブラックホールの中心からは、
プラズマガスなどの物質が光速に近い速度で噴出される
「ブラックホールジェット」の構造が確認されている

ヒラス条件も満たしており、
100EeVを超える極高エネルギー宇宙線の発生源である可能性が十分にある。
・ガンマ線バースト
「宇宙最大の爆発現象」と呼ばれるガンマ線バーストも、
候補に挙げられている。

これまでに観測された放射の継続時間の分布から、
2秒以上続くものを「ロングガンマ線バースト」、
2秒に満たないものを「ショートガンマ線バースト」に区分している。
発生源の詳細はまだ確定していないが、
ロングガンマ線バーストは非常に大きな質量をもつ星の爆発、
ショートガンマ線バーストは中性子星同士の合体が発生源ではないかと
議論されている。

この爆発のなかで「ジェット」の構造が生成され、
宇宙線を100EeVへと加速するヒラス条件を満たすと考えられている。

2022年10月9日には、
観測史上もっとも明るいガンマ線バーストが検出され、
そこから放たれたTeVのエネルギーをもつガンマ線が地球で検出された。
・銀河団
(繰り返しなるが、
こいつらではない(笑))

さらに大きいスケールとして、
銀河団による加速が考えられている。

銀河は宇宙に一様に存在しているわけではない。
銀河が形成している集団のうち、
数百から数千におよぶ銀河の集団のことを「銀河団」と呼ぶ。

銀河団ほどの大きさのなかで、
宇宙線がじっくりと長い時間をかけて加速され、
100EeVの極高エネルギーに達することが可能なのではという予想もある。

銀河団の大きさは1Mpc(※)ほどなので、
マイクロガウスの磁場であっても、
ヒラス条件的には100EeVへ到達できる可能性があるのだ。

(※pc:パーセク。3.26光年≒約3×1016m。長ッ!!
宇宙の距離を示すときに使われる単位。
太陽のまわりを地球が回転するときに見える天体の視差(年周期差)が
3600分の1度となる距離で定義される。)

ここまでに述べた天体起源説はあくまでヒラス条件を満たすものだけであり、宇宙線が加速領域から脱出しないための最低条件に過ぎない。

実際に、どこでどのような加速機構によって宇宙線が加速されているかは、これからの観測で明らかにする必要がある。

・新物理起源説
今までの天体起源説の他に、
我々の想像を超えるような未知の物理現象が
発生源となっている可能性も提唱されており、
「新物理起源説」と呼ばれている。

たとえば、
この宇宙に存在する証拠はたくさん見つかっているが、
観測はまだされていない「暗黒物質(ダークマター)」だ。
相対論では質量はエネルギーと等価であるため、
ダークマターのなかで特に重たい質量をもつものが対消滅し、
100EeVの宇宙線を生成しているのかもしれない。

ほかにも、
電荷と対をなす「磁荷(モノポール)」が宇宙のはじまりに生成され、
磁力線に沿って加速されて地球に到来しているという説や、
初期宇宙にできた位相欠陥の崩壊、
アクシオンやカルツァ=クライン粒子と呼ばれる未発見の粒子などが
起源という可能性も考えられている。

もしこれらが明らかになればノーベル物理学賞も夢ではないだろう。

ただ残念ながら、新物理起源で極高エネルギー宇宙線が生成されていることを示す証拠は、まだ見つかっていない。

極高エネルギー宇宙線天文学の最前線

天体物理学のホットトピックとして、高エネルギー天文学(マルチメッセンジャー天文学)を以前の記事で取り上げたことがある。

宇宙論を一から学ぶ ~延長戦~
以前に宇宙論を一から学ぶならというテーマで記事を書いたことがある。それから早9ヶ月。職場の同僚にもとも...

そして、本書ではその中でも「極高エネルギー宇宙線天文学」という分野を取り扱っている。

圧倒的に強い力をたずさえて到来する極高エネルギー宇宙線の発生源を明らかにすることができたなら、「天文学のパラダイムシフト」とも言うべき成功をおさめるに違いない。

だが、極高エネルギー宇宙線の到来頻度は年間で100平方kmに1粒子以下と、極稀である。

したがって、極高エネルギー宇宙線を数多く検出するには、巨大な面積におよぶ検出器と、継続的な観測が必要不可欠なのだ。

アマテラス粒子は一体どこからやってきたのだろうか。

驚くべきことに、
アマテラス粒子は、
宇宙の大規模構造では「局所的空洞」と呼ばれる、
候補天体がほとんどない方向から到来していたのである。

アマテラス粒子の正体に関する解釈としては

・宇宙線が過去に起きた何らかの突発現象によって加速された。

・近傍の候補天体で加速された、
鉄よりも重たいプラチナなどの粒子種が、
磁場によって大きく曲げられた。

・宇宙に存在する磁場の大きさが我々の予想をはるかに超えており、
近傍の候補天体から大きく曲げられた。

…などが考えられるが、現時点ではまだ明らかになっていないことが多い。

もしかすると光では見ることができない「暗黒加速器(ダークアクセラレーター)」が
アマテラス粒子の到来方向に存在しており、
我々がまだ気づいていないだけかもしれない。

本書では「2040年代の宇宙線天文学」と題して、現在進行中の観測実験の拡張や、さらにその先に構想されている検出器の詳細も紹介している。

読者のほとんどが「それはさすがに無理だろう」と思うものばかりだが、

人生の最大の喜びは、
できっこないと人に言われたことをやってのけることだ。

ウォルター・バジョット

この格言が示すように、周囲が無理と言うことにこそ挑戦してみるのが人生の醍醐味だ。

「前例がない」といわれることは、むしろチャンスかもしれないのである。

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ここで紹介したのは未だ謎多き極高エネルギー宇宙線のほんの概要である。

もっと知りたいと思ったら、専門書を読みふけって、「知識の宇宙」へ探索に出かけよう。

目指せ!!宇宙の住人(笑)!!これぞ賢者への道程!!

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