ほとんどの人々に当てはまる問題は、 人々が無知だということではなく、 知っていると思っていることの多くが事実と異なっていることである。 [19世紀のユーモア作家ジョッシュ・ビリングスの言葉] (しばしばマーク・トウェインの言葉と誤解される。 まさにそれ自体が実例となっている格言。)
地球温暖化と気候変動、太陽電池や風力発電などの代替エネルギー、石油枯渇への懸念、原子力発電を巡る現状、電気自動車…etc.
私たちのまわりには「エネルギー」に関わる話題が溢れかえっており、それは今日の世界で最も重要な生活必需品なのだ。
国の富とエネルギー消費には密接な関連があり、エネルギーを巡って国家間の戦争に発展する場合もある。そうした事例に対して、私たちの生活は敏感に影響される。例えば、世界の石油のたった2%しか供給していないリビアの情勢悪化によって、石油価格が10%も高騰したこともあるのだ。
こうした問題があるにもかかわらず、私たちはエネルギーをあって当たり前のものとしている。もし家庭への送電がストップしたら、原因は誰かの過失に違いないと考える。もし電気料金が上がったら、きっと誰かがズルをしていると考える。
安価なエネルギーは必需品であって、贅沢品ではない。多くの人たちはこのように、安価なエネルギー源を基本的人権とみなしているのだ。
さて、そんな知っていそうで知らないエネルギー問題について、米国エネルギー省顧問を務めたこともある一流物理学者が分かりやすく説明してくれている↓の書籍を参考に、語っていこうではないか。
なお、上記著者の他の書籍については、以前の地球温暖化の記事でも取り上げている。その他の記事でも参考にしている先生であるので、興味を持ったならそれらも読まれたし。
また、前述書籍の中で語られているのは主に米国におけるデータなので、日本におけるデータは↓を参考にした。オススメ度は若干下がるが、こちらも読まれたし。
さらに注意事項として、内容が多岐にわたるため数記事に分けて紹介していこうと思うが、それらは記事作成時点での情報であるため、直近で何か大きな技術的なブレークスルーがあってもフォローできていないので悪しからず。
とりあえず本記事では概論として、エネルギー問題の大きなポイントを3つ挙げよう。
ずばり、「環境」・「安定供給」・「価格競争力」である。
さてさて、これらのトピック(いくつかは重複しているが)を簡単に説明していこう。
環境 × 地球温暖化との戦い × 忌み嫌われる原子力
・福島原発やメキシコ湾原油流出事故は、当初多くの人が思っていたほどの壊滅的な大惨事ではなく、エネルギー政策の大きな転換を必要とするものではない。
・原子力は安全であり、核廃棄物貯蔵は難しい問題ではない。原子力に対する恐怖心は、無知と誤解から生じている。原子力発電にとって主な競争相手は天然ガスである。
・地球温暖化は、主として人間活動に起因する現実の出来事だが、低コストの方法や、やり方によっては利益を生み出す方法によって、中国などの発展途上国の温室効果ガス排出量を削減できればコントロールは可能である。
・将来的にみて、バイオ燃料のもっとも大きな価値は運輸エネルギーの安全保障であり、地球温暖化の防止ではない。トウモロコシのエタノールは、バイオ燃料とみなすべきではない。バイオ燃料にとって主な競争相手は天然ガスである。
・水素経済はまったく発展していない。地熱や潮汐エネルギー、波力などのロマンティックな代替エネルギー源には、大きな将来性はない。
・二酸化炭素増大の危険性に対して公に提案されている解決策のうち、実行された場合に現実に何らかの効果を上げる可能性のあるものは、ほぼ皆無である。「手本を示す」としても、発展途上国がその手本に倣うことができなければ意味がない。おそらく、唯一有効な解決法は、先進国のノウハウを積極的に発展途上国に供与して、石炭からシェールガスへの転換を促すことだろう。
(その他、参考として放射線の安全に関する以前の記事を挙げる。)
安定供給 × 必要なときに必要な供給を × 電気の貯蔵は困難
・シェール(頁岩)に大量に埋蔵されている天然ガスの開発が可能であることが、最近わかった。これは、たなぼたと言ってもいいくらいの大きな発見である。シェールガスは、今後数十年間先進国のエネルギー政策において中心的役割を果たすだろう。
・先進国で不足しているのは、化石燃料ではなく、輸送燃料だけである。今後のエネルギー問題がどうなるかは、合成燃料(人造ガソリン)、天然ガスやシェールオイルの埋蔵量、自動車の燃費の向上などにかかっている。
・太陽エネルギーは発展を続けているが、将来性が見込めるのは太陽電池であって、太陽熱発電ではない。太陽エネルギーにとって主な競争相手となるのは天然ガスである。
・風力は、電力供給減として大きな可能性を秘めているが、いまより高度な送電系統が必要になる。風力による電力生産は急速に増大しており、環境保護主義者からの反対の声も高まっている。風力にとっての主な競争相手は天然ガスである。
・(風力や太陽エネルギーの間欠性に対処するための)エネルギー貯蔵は困難で、高額な費用がかかる。もっとも費用効率の高い方法はおそらく電池だが、天然ガスによるバックアップのほうが安上がりかもしれない。
価格競争力 × エネルギーは価格変動する × ライバルは天然ガス
・エネルギー生産性は大幅に改善できる。効率化と省エネへの投資は、金融詐欺事件などでうたわれている高利率の投資よりもずっと大きな利益が返ってくる。しかも、この利益は非課税である。
・合成燃料は実用的であり重要だが、開発にあたっては1バレル(約160㍑)で60㌦以下になるようにコストを維持しなければならない。天然ガスから製造される自動車用の合成燃料は、圧縮天然ガスに勝てるかもしれない数少ないエネルギー源の一つである。
・新事実が次々と明らかになり、(良い意味で)破壊的な可能性を持つ新しいエネルギー源がある。シェールオイルである。アメリカには膨大な埋蔵量があり、実用的な採掘方法も開発されている。シェールオイルは、合成燃料よりも製造コストが安くなるとみられ、エネルギー産業界に厳しい競争をもたらすものになりそうだ。
・ハイブリッド自動車は大いに有望だが、プラグイン・ハイブリッド車や完全電気自動車はあまり有望ではない。プラグインと完全電気自動車は、バッテリー交換コストを考慮に入れると、運用コストがガソリン自動車よりもずっと高くなる。ただし、例外がある。鉛酸蓄電池を使ってごく短い距離(60~100km程度)を走る自動車なら、中国やインドやその他の発展途上国で広く普及する可能性がある。
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ここで紹介したのはエネルギー問題についてのほんの一部である。
次回も、オススメ書籍にある目から鱗の話題をどんどん紹介するので、乞うご期待!!
まだまだ語るぜ!!これぞ賢者への道程!!
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