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質量はなぜ存在するのか おすすめ理学書籍

量子論
質量があるのはおかしい。

素粒子の法則を学んでいくと、
質量が存在することが大問題であることに気づく。
基本法則によれば、
素粒子の質量はゼロでなければならない。

それなのに、
「自然に」質量は生まれた。

それはなぜか。
論理を追いかけていけば、
現代の素粒子物理の鍵になるアイデアやメカニズムを知ることができる。
それが本書の目的だ。

重力はもちろん、
電磁気力、
そして弱い力と強い力、
つまり自然界の四つの基本相互作用がそれぞれに役割を担う。

その背景として、
特殊相対性理論や量子力学はもちろん、
現在の素粒子標準模型とその基礎にあるゲージ理論、
そして肝となる自発的対称性の破れなど、
現在の素粒子理論にあらわれる基本的な考え方を総まくりすることになるだろう。

おもなプレーヤーとしては、
電子や陽子・中性子、
さらにはクォーク、
最後にはヒッグス粒子が登場する。
現代の素粒子物理のキーパーソンのほとんどすべてだ。

質量はなぜ存在するのか。
その謎を追うことで、
素粒子の世界を一通りめぐる。

それだけではない。
ボース-アインシュタイン凝縮、
さらには超伝導まで登場することになる。

(本書「はじめに」より)

…うんうん…開幕から知的好奇心を唆りまくる文章だ♪

今回紹介するのは、本ブログでも多く登場する高エネルギー加速器研究機構(KEK)にて日夜研究に勤しんでおられる橋本省二先生の、2010年に刊行された著書の改訂新版↓である。

科学好き・素粒子好きの読者の中には、
「質量の起源なら知ってるよ。ヒッグスでしょ。」
とおっしゃる方もおられるに違いない。

素粒子に質量をあたえるヒッグス粒子が発見された、
というのでCERN(欧州原子核研究機構)の
大型加速器LHC(大型ハドロン衝突型加速器)の結果が
大々的に報道されたのは2012年のことだった。

ヒッグス粒子が質量の生まれる仕組みの鍵をにぎっているのだと、
あのときの解説でどうも腑に落ちないという印象を
もたれた方も多かったのではないか。

ヒッグス場が水あめのように真空に満ちていて
素粒子が進めなくなるという説明もあった。
よく工夫されているとは思うが、
比喩をもち込むと肝心なところでわからなくなる。
水あめはどうして流れないのだろう、などなど。

本質はもっと簡単なのに比喩にしたせいで
余計に難しくなってしまっているように見える。
少し時間をかければちゃんとわかるはずだ。
本書がその助けになっているとよいのだが。

(本書「はじめに」より)

最初に大事なことを述べておこう。

今回のおすすめ書籍は、ブログ主が今まで読んだどの本よりも、「質量はなぜ存在するのか」ということがイメージしやすい。

既に脳汁がドバドバ溢れている方もいると思うが、最後のトドメとばかりに、素粒子物理を専門としている一部の人しか知らない事実を炸裂させて、以降はそのポイントを取り上げていこう。乞うご期待!!

質量の生まれる仕組みという意味では、
ヒッグス粒子がかかわるのは、
物質の質量の2パーセント分ほどでしかないことがわかっている。

その意味では、
「ヒッグスでしょ」と言った人の理解が2パーセント分しか正しくない。

残りの98パーセントはどこからきているかというと、
量子色力学という別の理論だ。

どちらが優れているとかそういう話ではなくて、
事実としてそうなっている。
そして、
その背景にあるメカニズムは
"自発的対称性の破れ"という南部陽一郎のアイデアだった。

2008年のノーベル賞につながったアイデアは、
特定の素粒子の発見につながるものではない。
むしろ、
すべての素粒子が浮かぶ真空についての私たちの理解を変えるものだった。

どういうことかは、
本書を読んでいただければおわかりになると思う。

(本書「はじめに」より)

なお、本書籍を読むにあたり、↓の記事内容を予習しておくと物理描像の理解が深まるのでおすすめである。自画自賛、悪しからず(笑)

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術式順転 「蒼」 & 術式反転 「赫」 → 虚式 「茈」

まず最初に下記↓の情報を前提条件として受け入れていただきたい。悪しからず(笑)

① 「質量がある」ということは「光速より遅い」ということ

「質量がある」ものには、
特殊相対性理論に基づきローレンツ因子がかかるようになることで、
永久に光速に追いつけない。

逆にいえば、
「光速より遅い」ということは「質量がある」ということになる。
② 「光速より遅い」ということは「スピンの向きが区別できない」

具体的に回転しているというわけではないが、
量子論の構成には軸と回転方向が設定された「スピン」という自由度がある。

仮に粒子のスピンの回転方向が「左回り」としよう。
後ろに追随して眺めると「左回り」で間違いない。
しかし、
その粒子より速く動いて振り返って眺めると、
なんと「右回り」に見えるではないか。

「光速より遅い」ということは、
光速に追いつけない範囲で、
自分より「遅い」ものも「速い」ものも存在するということであり、
本質的には上記のように「左回り」と「右回り」の情報が混在している。

つまり、
「スピンの向きが区別できない」ということだ。

対偶的に考えるならば、
「スピンの向きが区別できる」ということは「光速である」ということ、
つまり、
「スピンの向きが区別できる」=「質量がない」ということである。

これが本書の究極的なポイントである。
③ すべての素粒子はもともと質量がゼロである

最初に紹介したように、
量子論の基本法則からすると素粒子の質量はゼロである。

理論物理学のスタートが古典力学であるため、
マクロな世界にいる我々にはなかなか違和感が拭えないが、
量子論の視点に立てば質量が存在する必要はない。

現在構築されている理論物理学すべての枠組みでも、
よく言われるように、
電荷が反対でも成立するし、
時間の向きが反対でも成立する。

もともとすべてが「対称性」をもって始まっているので、
スピンだって反対向きでも物理法則は当然成立する。

スピンは左回りだろうが右回りだろうが物理法則は変わらず、
スピンの向きが変わる(回転方向の情報が混在する)要因、
つまり、
「質量」が存在する必要性はどこにもないのだ。

…ただし、
「ある相互作用」を除けばだが。

要するに、もともとスピンの向きが区別できて、しかもどちらでも問題なかった素粒子に、一方の回転方向にしか作用しない何らかの力が働くことで、その対称性が破れ、どちらかのスピンが優位になったのである。

そして、片方の回転方向が優位な素粒子の何種類かに、周囲の環境が影響することで「スピンの向きが区別できない」状態となり、結果「質量がある」状態に至ると。

少しづつ謎が解けてきただろうか?

不義遊戯 (ブギウギ)

押しつけがましいが、さらに↓の情報も受け入れでオネシャス(笑)

④ 粒子は大別すると「ボース粒子」と「フェルミ粒子」の2種類に分けられる

今まで登場したスピンの量子数(ステータスみたいなもの)で素粒子は大別でき、
半整数(±1/2, ±3/2, …)だとフェルミ粒子、
整数(0, ±1, ±2, …)だとボース粒子となり、
それぞれに応じた性質をもつことになる。
(各粒子の性質は前述のブログ記事を参照されたし。)

ここでポイントとなるのは、
「フェルミ粒子+フェルミ粒子のペア」は、
合計のスピン量子数が整数となるので、
疑似的に「ボース粒子」としてふるまうことになるのだ。
(もちろんボース粒子のペアも「ボース粒子」としてふるまう。)

ボース粒子であれば、
複数の粒子が「同じ状態」として存在することができる。
この現象をボース-アインシュタイン凝縮と呼ぶ。

仮に、
何らかのシステムの中で、
素粒子がペアで存在することで最も安定する状態である場合、
無限に多くの素粒子がペアを組んでその状態にてシステム内を揺蕩うことになる。

超伝導などもこうした原理によって引き起こされた状態である。
⑤ 「真空」とは「粒子+反粒子」のペアが揺蕩う海である

前述の「最も安定した状態 (=最もエネルギーが低い状態)」とはズバリ、
粒子とその対となる反粒子が結合して消滅した状態、
つまり「真空」である。

しかし、
「真空」とは「何もない」わけではない。

破壊と創造は表裏一体。
ペアとして結合して消滅した状態が最低エネルギー状態ならば、
ペアとして結合して生成された状態もまた最低エネルギー状態なのだ。

つまり、
粒子とその対となる反粒子が、
ペアとして生成されては別れ、
また別のペアとして消滅するということが、
そこかしこに起こっている。

さながら、
「最低エネルギー状態」という名の海のところどころに波が立つように、
「真空」の中で粒子と反粒子が生まれては消えてを繰り返すのである。

ここでいう「粒子」と「反粒子」は各システム内でそれぞれ構成される。

例えば、
電磁場であれば電荷が反対の粒子(電子と反電子, 陽子と反陽子, …etc)だろうし、
強い力の場であれば色荷が反対の粒子になるだろう。

こうした粒子と反粒子のペアはその対称性を保つために、
それぞれのスピンが逆を向いている。
また、
運動量の方向も逆を向いている。

では、
ここで仮に「特定の回転方向を持った質量のない(=光速の)粒子」が、
同じ種類の粒子とその反粒子のペアが揺蕩う海の中に置かれた場合、
なにが起こるか?

そう、突如その場に生成されたペアのうち、反粒子と結合して消滅してしまうのだ!!

残った粒子は消えた元相方である反粒子と反対方向の向きのスピンをもつことになる。回転方向の確率は半々だ。そして、その粒子もまた突如生成された別のペアの反粒子と結合して消滅する。

つまり、「残った粒子」が、真空に生成された粒子のペアのうち、反粒子と結合して消滅するという過程を繰り返すのだ。各過程でスピンの向きは、同じであったり反対であったりと、完全にランダムである。

また、最初の進行方向の情報は持ち越されるものの、生成と消滅の過程で、ランダムに運動の向きに正負の要素が入り込む。

しかも、量子論では同じ種類である粒子同士は区別することができない。消えた粒子もその後に残った粒子も「同一」とみなすのである。

広い視野でその海を見ると、最初に置かれた粒子が、スピンの向きを目まぐるしく変化させながら、ジグザクしつつ進んでいく描像が得られる。

お分かりいただけただろうか?

要するに、スピンの方向に偏りがある粒子を特定のシステム内に置くと、結果としてスピンの向きが混在した状態(向きが区別できない)になり、しかも最初の速度から多少遅くなって(光速より遅くなって)進んでいくことになる。

これが質量を得る仕組みなのだ!!

星の怒り (ボンバイエ)

残る謎として、特定のスピンの向きにしか作用しない力とはなんだろうか?

ズバリ「弱い力」である。

これはもう観測事実であるとしか言いようがなく、その理由も未だもって不明だが、「弱い力」は左巻きの粒子にしか働かないのだ。

つまり、「弱い力」が作用する粒子はスピンの方向に偏りが生まれ、それが巡り巡って質量を獲得するに至ると。

はてしない物語で記事読者の方もお浸かれであろうし、あとは簡単に。(おいコラ(笑))

あとは、
観測上で現在判明している、
粒子・反粒子ペアの存在が理論構築された各システムに当てはめるだけだ。

「強い力」であれば、
色荷を介したグルーオンやクォークのペアにより、
スピンの混在が生まれる。

「弱い力」は「電磁気力」と合わさって「電弱力」を構成するのでやや複雑になるが、
ヒッグス場を介したペアにより、
スピンの混在が生まれる。

各システムによって生まれる質量の大小があり、
その度合いも観測結果であるとしか言いようがないが、
強い力(量子色力学)が98%、
ヒッグス場(電弱力)が2%を占める。

これが現状提唱されている「質量」なのである。
もちろん、
新たな質量の種類も考えられている。

例えば、
ニュートリノは電荷がなく、
回転の向きを介してそれ自身が反粒子となりえる。
(これをマヨラナ粒子と呼ぶ。)

他の素粒子に比べてニュートリノが極めてわずかな質量しかもたない理由も、
もしかしたらこの対称性を介して生まれる新システムが原因なのかもしれない。

また、
宇宙全体で我々が知っている物質の約5倍の質量を担っているとされる、
ダークマターに関しては、
現状観測されている情報はまったくないため何とも言えないが、
スピンとはまた別の質量獲得のシステムがあるのかもしれない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで紹介したのは「質量はなぜ存在するのかという根源的なテーマのほんの触りである。

なお、登場する理論背景の詳細が知りたくなった方は↓の専門書もチャレンジされたし。

もっと知りたいと思ったら、本書を一読して、「量子の海」へ漕ぎだそう。

目指せ!!量子論の隣人(笑)!!これぞ賢者への道程!!

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