引き続き、ミレニアム懸賞問題を紹介していこう。
今回は代数幾何学と代数的位相幾何学の二刀流、「ホッジ予想」について。
前回のポアンカレ予想、次回のバーチ・スウィナートン=ダイアー予想もそうだが、とかく「幾何学」という分野は現代数学の抽象化がひときわ盛んな印象が強い。
加えて、「代数」「幾何」「解析」の3要素が融合しているため、概念を説明しにくい・・・。
そのため、どうしても詳細な解説は専門書に譲ることになるが、悪しからず。
参考は例のごとく↓の書籍。賢者を目指すブログ主の聖書。
「ポアンカレ予想って何?」という人は下記記事も参照されたし。
代数多様体
曲線や曲面を記述する標準的な方法は方程式を利用することだ。
代表的なものは、多項式からなる方程式だ。
ここから、幾何学的曲線と代数的多項式という2通りの視点が得られる。
例えば、円の方程式はx2+y2=1だ。
だからP(x,y)で多項式 x2+y2 -1を表すとすると、円はPが0になる点の集合だ。
すなわち、P(x,y)=0となる(x,y)のすべてを集めたものが円である。
多項式が0になる点の集合というのが、代数多様体の基本的な考え方だ。
多様体を貼り合わせるといった幾何学的操作は、多項式に対する何らかの代数的操作に対応する。ここから、代数的位相幾何学という分野が始まった。
代数的位相幾何学と代数幾何学
20世紀初期、位相幾何学者は「単体」を基本にして幾何学の言語を作り出していった。
・0次元単体とは、1点のこと
・1次元単体とは、2点によって区切られた線分
・2次元単体とは、3本の線分と3点で区切られた三角形
・3次元単体とは、4個の三角形,6本の線分,4点によって区切られた四面体
・4次元単体とは、5個の四面体,10個の三角形,10本の線分,5点によって区切られた五胞体
一方、「複体」とは任意の数の単体の辺を貼り合わせてできる図形だ。
位相幾何学者は、単体を加えたり引いたりすることによって群が作れることから、基礎となる代数的規則が見出せると考え、「代数的位相幾何学」という分野を深めていった。
また、こうした代数的位相幾何学とは別に、幾何学的多様体の代数的表現(前述の代数多様体)が多項式環の構造を持つことから、「代数幾何学」という分野も発展していった。
・・・名前が紛らわしい(笑)
つまり、幾何学を十分に理解するためには代数学の知識が欠かせないし、逆もまた然りだ。
この両面からのアプローチは20世紀全般にわたり、多くの成果をもたらしてきた。
代数幾何学がどのようにして代数的位相幾何学と結びつくのかが「ホッジ予想」のテーマだ。
ホッジ輪体とホッジ予想
幾何学はユークリッドが理解した何らかのものから始まり、20世紀中頃までに長い道のりを歩んできた。幾何学者の関心は昔から変わらず、どのような図形が存在するのかということに向けられている。
この問いに対する答えは、前述のように代数学によって2つの異なる方向で深められた。
1つは代数幾何学における多項式、もう1つは代数的位相幾何学における群だ。
前者によって、図形に対する基本的概念として多様体が与えられた。これらをわずかに拡張したものが「代数的輪体」だ。これは多様体を形式的に足し合わせ、それに有理数をかけることで構築できる。
後者には、単体の位相幾何学的構成がある。ここでも、単体を形式的に足し合わせると「位相幾何学的輪体」ができる。
ウィリアム・ホッジは1950年に国際数学者会議での講演で以下の問いを提起した。
こうした2つの異なる考え方はどのようなときに同じ結果を生むのか? 位相幾何学的輪体が代数的輪体と同じになるのはいつなのか?
微積分学の大家でもあるホッジはラプラス方程式を研究し、ある特定の安定した位相幾何学的輪体を表現する言語を見出した。この輪体は現在では「ホッジ輪体」という。
ホッジは、これによって代数的輪体を位相幾何学的に正しく表現できる予想した。
確かに、すべての代数的輪体はホッジ輪体である。
懸賞金問題は、その逆も成り立つかどうかである。
この問題の重要性に疑問を呈する人はいないが、正しいかどうかは未解決である。
1962年にアティヤとヒルツェブルフが、この予想は輪体を有理数ではなく整数に限って考えたときには正しくないことを示した。アンドレ・ヴェイユはホッジ予想を正しいとは思わず、幾何学者は反例を探した方がいいだろうと考えていた。
ホッジ予想は、証明されるか反例が見つかるかするまで、アレクサンドル・グロタンディーク曰く、「代数多様体に関する解析的理論における最も深淵な予想」であり続けるだろう。
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ここで紹介したのはホッジ予想に関する大まかな知識である。
もっと知りたいと思ったら、専門書を目印に、「数学の森」の奥深くに進んでみよう。
目指せ!!未確認問題動物(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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