引き続き、ミレニアム懸賞問題を紹介していこう。
今回は現代数学の開拓者、「バーチ・スウィナートン=ダイアー予想」について。
この問題自体は代数幾何学の有理点について取り扱っているが、テーマに楕円曲線とL関数が含まれるため、リーマン予想と同じく現代数学の中心的役割を担う可能性を秘めている。
参考は例のごとく↓の書籍。賢者を目指すブログ主の聖書。
楕円曲線
方程式y2=x3-xには特別な何かがある。
この方程式は曲線を描くのだが、それは普通の曲線ではない。
a,bを曲線上の点として、それらを結ぶ直線を引くとしよう。
この直線は第3の点cで曲線と交差しなくてはならず、このときa+b+c=0となる。
この規則は楕円曲線に対してのみ適用可能で、曲線は群をなす。
結果としてできる群は予測がつかないもので、暗号学の主力にもなっている。
一般に、楕円曲線の方程式は、ある値A,Bに対して下記のように書ける。
y2=x3+Ax+B
これらは比較的単純な曲線にもかかわらず、理解が非常に難しい。
言葉だけではなんともイメージがつきにくいので、ウィキペディアで図を確認されたし。
楕円曲線は現代数論、特にワイルズによるフェルマーの最終定理の証明やラングランズプログラムで中心的役割を果たしている。
そして、その特性はバーチ・スウィナートン=ダイアー予想のテーマになっている。
楕円曲線の有理解
y2=x3+1などの方程式を考えよう。
数論の専門家がまず行うのは、これを満たすような整数(例えば32=23+1)があるかどうかを問うことだ。
最近では、研究対象を拡張して方程式を満たす有理数まで考えるのが主流だ。
すると、こうした方程式に対する問いは、有理数解が無限に存在するのか、あるいは有限個だけなのかということになる。
この問いが未だ十分に解明されていない最も初等的な方程式が、y2=x3+1のような楕円曲線なのだ。
楕円曲線に対してこの問題を解くことは、現代数論の重要な目標だ。
1960年代に、ブライアン・バーチとピーター・スウィナートン=ダイアーがこうした重要な方程式の有理解の数を調べるための予想を立てている。
バーチ・スウィナートン=ダイアー予想
任意の楕円曲線(Eとする)から、対応するL関数(L)を定義する方法がある。
バーチとスウィナートン=ダイアーは、L関数がEの有理解の情報を含んでいると主張した。
L関数を使えば、Eは無限に多くの有理点が存在するのか、有限個しか存在しないのかが見出せるはずだと考えたのだ。
予想によれば、L(1)=0ならば曲線には無限に多くの有理点が存在し、L(1)≠0であればそうではない。
これまで、L(1)≠0であればEには有限個の有理点しか存在しないことは証明されている。
残る半分、L(1)=0ならば無限に多くの有理点が存在することの証明に懸賞金がついた。
さて、現代数学は「代数」「幾何」「解析」の融合が一つの目標であり、これらはラングランズプログラムという形で目下進行中である。
L関数は、複素解析と幾何学と関連づけるモジュラー形式、数論と解析を繋げる楕円曲線の2つをさらに結ぶ役割をしている。
(ちなみに、この2つがL関数を通じて本質的に同じであることをモジュラー性定理といい、上述のワイルズによるフェルマーの最終定理の証明に繋がっている。)
バーチ・スウィナートン=ダイアー予想は、ラングランズプログラムで中心となっているL関数の理解を進めるという意味でも、現代数学にとって非常に重要な問題なのである。
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ここで紹介したのはバーチ・スウィナートン=ダイアー予想に関する大まかな知識である。
もっと知りたいと思ったら、専門書を目印に、「数学の森」の奥深くに進んでみよう。
目指せ!!未確認問題動物(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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