さて、ミレニアム懸賞問題の紹介も終盤戦。
今回は流れの読めないクールガイ、「ナビエーストークス方程式」について。
今回の記事と次回のヤン-ミルズの問題は「数学」というよりは「物理」の分野になる。
数学的には「解析」の側面が強いが、少し今までと毛色が違うので悪しからず。
参考は例のごとく↓の書籍。賢者を目指すブログ主の死海文書。
「ミレニアム懸賞問題って何?」という人は下記記事も参照されたし。
流体力学
流体はどのように流れるのだろうか?
力学における連続的な変化は、ニュートン力学の離散的な粒子に比べてモデル化するのが遙かに難しい。
18世紀に、レオンハルト・オイラーはこの問いを考察した。
流体の流れに対するオイラーの公式は本質的にニュートンの第2法則で述べていることであり、それを理想化された流体に対して言い換えたものだった。
19世紀には、オイラーの功績をもとにしてクロード=ルイ・ナビエとジョージ・ストークスが別々に研究を行った。この2人が流体の流れの数学モデルとして取り扱ったものは、本質的に同じだった。
オイラーは流体の非圧縮性(液体が収縮したり膨張したりしない:∇・u=0)を仮定するとともに、流体には粘性がない、すなわち、内部摩擦による力は働かず、全体にわたって自由に動き回ることができると仮定して、下記のオイラーの公式を示した。
∂u/∂t+(u・∇)u=-∇p (ここでuは流れのベクトル場、pは流体の圧力)
液体がさらなる外部の力f(例えば重力)を受けるとき、方程式は次のようになる。
∂u/∂t+(u・∇)u=f-∇p
ナビエとストークスは新しい定数νを導入して流体の粘性を定量化した。
これにより、方程式はよりいっそう解きにくくなった。
これがかのナビエーストークス方程式だ。
ナビエーストークス方程式
1822年、技術者でもあり数学者でもあった、クロード=ルイ・ナビエはまず、オイラーの流体の流れの式を改善し、液体が粘性を持つことを許容した。
粘性を持つとは、流体内部での動きを妨げる摩擦力が働くということだ。(ハチミツが高い粘性を持つ流体の例)
ナビエはこの状況を説明する基本的な方程式にたどり着いたものの、数学的な議論には正しいといえない部分があった。
数年後、独自に研究を行っていたジョージ・ストークスは、ニュートンの第2法則から、基本的な方程式を正しく導くことに成功した。
ナビエとストークスが加えた重要な要素は、流体の粘性を定量化する定数νだ。
外部の力が流体に働いていない場合に、ナビエーストークス方程式が示しているのは、その速度uが以下を満たすということだ。
∂u/∂t+(u・∇)u=ν(∇2)u-∇p
外部の力fが働いている場合には、方程式は以下のようになる。
∂u/∂t+(u・∇)u=f+ν(∇2)u-∇p
ナビエーストークスの問題
ナビエーストークス方程式の導出は、自然をモデル化する数学の力の勝利だといえるだろう。
この方程式は、幅広く多様な状況で、大規模かつ詳細な実験による検証を受けてきた。
また、これは流体力学で中心的な位置を占めており、その研究をもとに航空機の翼から人工心臓弁に至るまでの技術的進歩が生まれた。
それだけに、この方程式が数学的な解を持つかどうかすらわかっていないというのは、驚くべき事態だ。
もっと正確にいうと、オイラーの公式、あるいはナビエーストークス方程式方程式を短い時間だけ満たすuの数式を見つけることはできる。
だが、そうした解は時間が経過すると滑らかな関数ではなくなる(物理的な流体では起こり得ない状態になる)ことも少なくない。
いまだに、時間tのすべての値に対して有効な1つの式、すなわち、オイラーの公式やナビエーストークス方程式を解く式を見つけた人はいない。
2次元においてこれら方程式にあたるものは解けているのに、これは本当にもどかしい・・・。
というのも、自然界のみならずコンピューターシミュレーションによる証拠からも、そのような解はたくさんあるはずなのがわかっているからだ。
そうした状況から、2000年にクレイ数学研究所はナビエーストークス方程式をミレニアム懸賞問題の1つとして提示したのである。
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ここで紹介したのはナビエーストークス方程式に関する大まかな知識である。
もっと知りたいと思ったら、専門書を詰め込んで、「理学の頂」の山登りに出かけよう。
目指せ!!未解決峰制覇(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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