ギリシャ人以来、数学とはすなわち証明である:或る人々によれば、証明というものは、この言葉がギリシャ人から付与されたところの、そしてまたわれわれがここでそれに与えようとしている正確にしてかつ厳密なる意味においては、数学以外には見いだし得ないものなのではあるまいかとさえ考えられている。証明の意味は昔からけっして変わってはいない。ユークリッドにとっての証明は依然としてわれわれの眼にも証明である。 (ブルバキ 「数学原論 集合論」より)
誰しもが数学を習ったときに目にする「証明」というフレーズ。
数学が好きな人も嫌いな人も一度は「証明っていったい何?」と思ったことがあるだろう。
本記事で紹介する理学書↓は、そんな「証明」を数学の各分野と絡めて解説している一冊。
この本を通じて、
・数学における証明とは何か?
・それが普通に使われている「証明」という言葉とどうつながるのか?
・普通に使われている言葉と少し違っているとすれば、どこがどう違うのか?
・・・について知ることができるだろう。
本書のポイントを3つ挙げるとすれば、
① 論理の構造は3つ:演繹・帰納・仮説
② 算数・幾何・解析・代数それぞれで「証明」の特徴が違う
③ 証明とは意味を考えること
さてさて、これらをかいつまんで説明していこう。
パラメータその①:基本構造
証明の根幹をなす論理構造として、演繹・帰納・仮説の3つに分けられる。
演繹とは、「A(前提)である。AならばBである。したがってB(結論)である。」という、前提から結論を導く論理。
帰納とは、「Bである。AならばBである。したがってAである。」という、結論から前提を推測する論理。
仮説とは、前提と結論を知って、その中間の「AならばB」を繋げる論理である。
証明は上記3つのどれかをとるが、イメージとしては仮説論理が分かりやすいだろう。
仮説を証明することで、全体が一繋がりの演繹論理となり完成するわけである。
ちなみに、「数学的帰納法」は英訳の段階でこのような名称がつけれられているが、構造としては演繹論理である。
ややこしいわ(笑)
パラメータその②:ターゲット
小学校で習った算数の中に証明なんてあるの?
そう思う人も多いだろう。
いえいえ、四則演算も前提と結果を繋ぐ立派な「証明」問題です。
算数を含めた数学各ジャンルの証明の特徴をざっくり挙げる。
算数:文字式の計算を通じて、等号が成り立つか証明する
幾何:補助線などを利用して、仮定と結論を結ぶミッシングリンク(仮説)を探す
解析:具体的な数学的対象を作ることが難しい「非構成的」な証明や背理法を使い、「無限」を対象として相手取る
代数:有限の立場で演算や方程式の解などを考察する (算数もこれに含まれる)
こんな感じで大まかに分類したが、例えば代数学の基本定理の証明が、関数の連続性という解析学(あるいは位相幾何学)の手法を使っていることもある。
このあたりはまさに現代数学といった感じで、各々の分野の証明に、分野を超えた統括的な技術を用いているのがトレンドである。
具体的な証明問題については割愛するので、本書を読まれたし。悪しからず。
パラメータその③:使用言語
証明とは数学的な事実(定理)の正しさを理解し、多くの人と共有する方法である
人が証明を通して数学的事実の正しさを納得するという心理は、最終的に定理の意味するところを理解し、その意味が正しかったことを証明という手段で納得し、最後に定理のイメージを自分の知識体系の中のしかるべき位置にぴったりと収める行為である。
収まりが悪い知識は「証明できているのだから正しいのだと思うけれど、分かった気がしない」という感覚を作り出してしまう。
そのような事態には、数学が世界共通の形式的な人工言語として、意味やイメージ抜きで扱えてしまうということが背景にあるのだと思う。
だからこそ、数学的事実が理解から離れて一人歩きしないためにも、
証明の本質とは、その言葉の意味を追いかけることである
・・・これが本書を通じて著者が伝えたかった、数学にとっての証明の意義だと私は考える。
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ここで紹介したのはおすすめ書籍に関する概要と考察である。
もっと知りたいと思ったら、本書を一読して、「数学の森」の奥深くに進んでみよう。
目指せ!!数学の愛人(笑)!!これぞ賢者への道程!!
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