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生と死を分ける数学 おすすめ理学書籍

数学
数学は、
あなたの人生のそこかしこに入り込んで、
生殺与奪の権利を握っている。
生きるも死ぬも、
数学次第なのだ。

実際、
数学を知らないために、
あるいは数学を誤用したために、
命を落としたり、
財産を失ったり、
無実の罪を着せられたりした例が、
どれほど多いことか。

逆に、
簡単な数学を少し使えるだけで、
マスコミや政治家の嘘を見破ったり、
詐欺に巻き込まれるのを防いだり、
健康診断の結果を正しく理解したりできるようになる。
さらには、理想の結婚相手を選ぶのにも役立つかも……。
<後述のおすすめ書籍より抜粋>

以前、「とんでもない死に方の科学」と題して、死と科学との結びつき(大仰な物言いだが(笑))を語ったことがある。

物事は表裏一体。死あらば生あり。死中に活あり(意味が違う(笑))。

てなわけで本記事では、生と数学との結びつきを語るために、つい先日に本屋でジャケット買いした↓の書籍を紹介しよう。内容も面白かったし、良い買い物をした♪

著者のキット・イェーツ氏は、かのオックスフォード大学にて数理生物学を専攻し、現在は大学で数理生物学を教える傍ら、一般の人々への数学啓蒙活動にも従事している。

本書も、そうした講演や記事の寄稿などを基に、「日々の暮らしで、往々にして気づかぬうちに、数学の大きな影響を被った人々の物語を集めた本」となっているのだ。

そして、前もって謝らせてほしいが、かなりの数のトピックが刺激的で示唆的であり、いつもの感じでそこから紹介したい話題を取捨選択することができなかった…。

…だって、新型コロナウィルスのパンデミックにも関係の深い内容だぜ?

偽陽性・偽陰性、集団免疫とワクチンの意味、政治家のSNSでの発言やマスコミの世論調査などに登場する数理や統計……etc. 全部読んで欲しいでやんす(笑)

したがって、本記事では全体の簡単な内容紹介にとどめよう。悪しからず。

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1章 指数的な変化を考える

指数的な振る舞いの恐ろしいまでの威力を活用し
その限界を冷静に見定める

放射性元素の核分裂や受精卵の細胞分裂、バクテリアの増殖からネズミ講まで、自然界や日常のいたるところに見られる「指数的な増加」が紹介されている。

これは、ざっくりいうとドラえもんの「バイバイン」と同じで、例えば2倍→2倍→2倍→…と同じ倍率での増え方である。この「同じ倍率で増える」というシンプルな表現に隠された以外な性質の数々を、具体例で明らかにしていく。

じつは、このような変化についての知識がないと、判断を誤り、さまざまな形で不利益を被る場合が出てくるのだ。

2章 感度と特異度とセカンド・オピニオン

なぜ数学が医療に大きな違いをもたらすのか

例えば、近年一般の人々も直面することが多くなってきたさまざまな検査結果と、その解釈の裏に潜む数学が紹介される。

わたしたちは、個人向け遺伝子検査や乳がんの早期発見を目指すマンモグラフィー検査、出生前診断の結果をどう捉えるべきなのか。検査結果にただ一喜一憂するだけでは、心身に不要なダメージを被ることにもなりかねないのだが…。

医療従事者として、本記事で紹介トピックを取捨選択できなかった諸悪の根源である章(笑)

3章 法廷の数学

刑事裁判における数学の役割を調べる

法廷における数学の活用と乱用が紹介される。

「科学的根拠」は、司法の場で罪の有無を判断する際の決め手だが、この分野でも数値が使われることが多くなり、司法における数学の重みは増している。

2章で得られた「偽陽性と偽陰性」という視点を加味されて紹介される複数の事例からは、数学に強そうな権威にひれ伏していれば正しい裁きが行われるわけではない、という普遍的な事実が浮かび上がってくる。

訳者いわく、カルロス・ゴーン氏が違法行為をしてまで避けようとした日本の司法にも触れられており、日本の司法に対する外からの見方が垣間見えて、なかなか興味深いとのこと。

4章 真実を信じるな

メディアの統計の嘘を曝く

政治家のSNSでの発言や宣伝やマスコミの世論調査などに登場する数値や統計などが、数学的に検証されている。

初歩的な数学的推論をするだけで、「あのテロは強力な組織による犯行だ」とする政治家の主張の真偽が明らかになる。ちょっと注意をしただけで、化粧品会社が自社製品へのモニターの評価をいかに膨らませて誇大な広告をしているかもわかる。

さまざまな時事問題がSNSや紙面やテレビ画面を賑わす昨今。それらの情報にどう向き合えばよいのか、右から左へ聞き流して手をこまねいているだけではまずい気がするが、ではどうすれば……と思っている人もきっと多いはずだ。

5章 小数点や単位がもたらす災難

わたしたちが使っている記数法
その進化と期待外れな点と

今までとは打って変わって、10進法をはじめとする記数法と単位が取り上げられている。

記数法も単位も人間が外界を記述するために人工的に定めたものなので、複数のやり方が存在する。したがって、たとえば変換の際に誤差や勘違いなど、さまざまなミスが発生し、人命に関わる事故や大惨事にいたる可能性がある。

その意味では、記数法や単位もまた、数学と現実のシビアな接点なのだ。

6章 飽くなき最適化

何物にも制約を受けないアルゴリズムの威力
進化から電子商取引まで

AIとも深く関わるアルゴリズムの数学が取り上げられている。

アルゴリズム論議は、ややもすると機械万能礼賛に陥りがちだ。

だがこの章では、いくつもの事例を通して、あくまでも人間あってのアルゴリズムであることを明確にし、わたしたちにも使える手軽なアルゴリズムを紹介して、「アルゴリズム」の本来の意味を伝えている。

7章 感受性保持者、感染者、隔離者

感染拡大を阻止できるか否かは
わたしたちの行動次第

数理生物学者たる著者の専門の一部である、感染症と人間の戦いにおける数学の役割がテーマになっている。

医療従事者として、本記事で紹介トピックを取捨選択できなかった諸悪の根源 その②(笑)

有史以前から人類を悩ませてきた感染症との戦いにおける転換点、感染症の数理モデル、感染症の流行や終息の現実、さらには集団免疫とワクチンの意味などが、明快なアナロジーを用いて紹介されている。

忘れもしない、日本において新型コロナで一躍注目を浴びることになった数理疫学のモデルの基本が平易に語られている。感染症の数理モデルは、物理現象の数理モデルと違って、その予測に基づく人工的な介入によって予測が外れることで、社会に貢献する側面があることに注意されたし。

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この記事ではおすすめ書籍で語られているトピックすら紹介していない(笑)。

毎度のことながら、盛大にサボったなぁ(笑) サーセン、是非是非ご一読を。

ここで最後のコメントだが、複数取り上げられている時事的(かつ倫理的に繊細)な問題の具体的な処方箋や解決策が、ずばりこの本に書かれているわけではない。

だがこの本を通じて、それらに対する自分自身の基本的な構えを作る助けとなるだろう。

人生の(ほぼ)すべてに数学が関係する!!これぞ賢者への道程!!

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